ワクチン接種のため、ハックを動物病院へ連れて行く。日記を読み返してみると前回のワクチン接種の記録をつけていなかったので、ここで復習しておく。

*2007年11月27日: キャプテンと2人で動物病院にハックを連れて行き、ワクチン接種とマイクロカプセル装着。診察室でかごから出たハックは先生を見るや否や唸り始める。ハックにとって白衣は「悪」であることを記憶しているようだ。「じゃあ胸の音診ますね」と差し出した聴診器にハックンパンチをお見舞いし、「ファーッ!」と威嚇する。仕方なく聴診器断念。「じゃあ注射しますので押さえててもらえますか」との先生の指示だが、勢いに乗るハックは既に手がつけられず、診察台の上で僕のお腹に顔をうずめたまま、近づく手には遍く攻撃を加える。「うーん、じゃあ仕方ないのでこれに入れてもらえます?」と先生、申し訳なさそうに網を差し出し、隣の部屋に避難。診察室にはキャプテンと僕とハック、2人と1匹が残される。暴れるハックと格闘しながら何とか網に入れるものの、僕は手を引っかかれ、流血。網に入ると意外におとなしく、何とか注射を終え、精神的にも肉体的にもくたくたになって帰路に着く。こんなことでフランスに連れて行けるのだろうかと底のない不安がよぎる。

そして今回、前回の反省を踏まえ、ハックをあらかじめ洗濯ネットに入れ、カゴに入れて病院へ連れて行く。この方法、インターネットを見ると普通のようで、こうするよう指示している病院もあった。これなら安心と思い、用事のあったキャプテンを家に残し、一人で病院へ。
待合室は結構込み合っていて、その間隣の犬に向かって軽く威嚇。なだめながら待つこと約10分、順番が来て診察室へ。そしてネットをつかんで診察台に乗せるとまたも先生に唸り始める。「じゃぁ注射しますので」ということでネットの上からハックを押さえると、病院中に響き渡るような声で叫び、ネットの中でもがいて僕の手をネット越しに噛む。今回も流血。先生困った顔で笑いながら、もう一人獣医師さんを呼び、「じゃあバスタオルお貸ししますので」とバスタオルをかぶせ、体重をのせて押さえつけながらようやく注射を済ませる。この間も院内にはハックの叫びが充満していた。注射を終えた先生、ボソッと呟く。「次回採血の時には麻酔が必要ですね・・」。そう、これで終わりではないのである。抗体ができたか調べるための採血というさらに困難な作業が待っているのだ。この先生、かなり優秀で、今まで見た中で一番優れた獣医師さんであるが、そんな先生でも相当困ったようだ。再びカゴに入れ、診察室を後にする。出てくると待合室にいた人たちが皆こちらを見ていた。あの叫び声を聞いてどんな怪獣が出てくるか興味があったのだろう。何となく肩身の狭い思いをしながら端の椅子に座る。ハックはまた隣になったさっきの犬に軽く威嚇。お金を払い、(心労手当てを付けてあげたいくらいだ)やっと病院を後にする。
アパートの階段を上る頃になると、もう家が近いことが分かるのか、ネットから脱出しようともがき始める。家の中に入り、ネットから出してやり、「お疲れ様」の鰹節を与える。着替えた僕のTシャツは汗でじっとり。次回の動物病院持ち物リストにアイテム一つ追加、「バスタオル」を忘れずに。