トロワくんの不調

紹介していきなりであるが、ここしばらく、トロワくんは調子が悪い。朝晩の冷え込みが厳しいと(昼はOK)、エンジンがなかなかかからない。しかも点火しないというのではなく、もっと別の種類のトラブルである。ブレーキを踏んでキーを回すが、「ブレーキペダルを踏んでください」という指示が表示される。ブレーキランプも点灯しておらず、ブレーキを踏んでいることが認識されていない感じである(ブレーキは実際にかかる)。数分間格闘すると思い出したようにランプがちらちらと点き始め、ちゃんと点灯するとエンジンもかかる。僕は車に詳しくないのでよく分からないが、イヤな予感だけははっきりとする。パリに出かけて、路上でそのまま息を引き取るなんて事になってはかなわない。そこで会社の車整備の人に一度見てもらうことにした。
通訳の人に事情を説明すると、すぐに整備の人が行くとのこと。現れた彼は挨拶もそこそこにキーを受け取り、エンジンをかける。当然昼間なので問題なくかかる。「これで問題ないって言いそうだなー」と思っていると、猛然とギアをA⇔N⇔Rと変え始めた。ひとしきりそれを試し、何度かエンジンをかけたり切ったりした後、僕の方に向き直り、「エンジンをかけるときはNにしないと駄目だぞ!?」とのこと。「は?」と一瞬びっくりして「もちろん!」と答えると、「切る時もだぞ!?切る時もNだぞ!?」と彼。あまりに違う角度からの考察にびっくりしたが、どうも僕がエンジンをかける時にA(つまりドライブ)に入れたままだと思ったらしい。それは否定するものの、フランス語で「いや違うんです、Nに入れてるし、ブレーキもしっかり踏むんだけど、ブレーキランプがなかなか点かなくてね、数分たつとちらちらと・・・」などと説明することは不可能である。それに今は昼間で好調。問題全くなし。がっくりと肩を落としてキーを受け取り、不安は消えぬまま帰宅する。
ところが。意外なことにこの日から後、それほどトラブルが起きない。ちゃんとランプも点く。一度でうまくいかなくても、ちょっと間を置いて2、3回試せば何とかかかる。フランス車にはフランス車の直し方があるのか?絶対に根本的な修理ではないし、そのうち災厄が降りかかってくると確信しているが、「まぁとりあえずいいか」と放置することにした。この車も12月までだし(新しい車になる予定。この車は次の人が使う)。この「ま、いいか」がフランス化なのだろう。