嗚呼、ワクチン接種

ついにこの日が来てしまった。ハックが日本に帰国するために必要な狂犬病のワクチン接種をしに行く。
帰宅後、すぐにハックを捕獲、ケージに押し込み(文字通り押し込み)、覚悟して待っていたキャプテンと一緒に動物病院へ。
病院に到着すると匂いで分かるのか、凄みのある声で唸り始める。病院のドアを開ける前から、中で待っているお客さんの注目を集めてしまった。皆の失笑を買いつつ、奥の猫ちゃん専用スペースへ。今日の担当先生はドクター・ポワッソン(「魚」の意)。初めのうちは「名前はー、H、A、C、K、アック!今日はワクチンねー。」等と陽気に接していたが、ケージから出す際に抵抗して凄まじい叫び声を上げた辺りから、これがただの猫ではない事に気付いたらしい。「いつもこうなのか?」、「去勢はしているのか?」等々質問し、僕に押さえておくように言いつけてさっと注射を済ませる。注射後、「他の猫とは一緒に飼わない方が良い。社会性がないから」とのアドバイスを頂いた。それは確かに正しい。しかし先生、我々はもう3年一緒にいるんです。
退室する際、再びかごに押し込めようとしたが、さらにもの凄い声をはり上げて拒否。隊員負傷。魚先生が「大丈夫?怪我したか?」と聞いてくれたが、「大丈夫です」と答える。ハックを押さえるために持っていたバスタオルに付着した赤い染みが悲しい。待合室に出ると、そこにはもはや失笑はなく、我々は真剣な驚きの眼差しを浴びる。
渡仏以来、いろんな目に会ってきたが、考えてみると、フランスに来て、これまでで一番辛い作業はこれだったかもしれない。そしてそれはフランスが原因ではなく、うちの猫が原因というところが悲しい。