屋久島旅行 3日目

昨日までの雨は止んだが、空は相変わらず暗いまま。「今日も登山は無理かな」と諦めかけていたが、日が昇るにつれて雲が薄くなっていく。予報は北の風になっているし、これなら大丈夫そうだということで、モッチョム岳登山へ。
我々のガイドブックによると、モッチョム岳は初心者でも日帰り可能な登山コースの一つに数えられている。急峻な道の最後には大パノラマが待っているらしい。体力度は5段階中の4とかなりの苦戦が予想されるが、写真部としては手を抜くわけにはいかない。D80SIGMA 18-50mm F2.8を装着し、さらに50mm単焦点交換レンズ1本と三脚を詰め込むと、リュックはずっしりと重くなった(カメラ機材だけで3キロ弱ある)。装備を確認し、水とスナックを持ってホテル出発。車で千尋の滝へ向かい、6時30分、駐車場からスタート。
靴ひもを結び直すキャプテン

歩き始めてすぐに道の勾配はぐんぐん増し、手を付かないと登れないほどの急斜面になる。ここで一つ目の装備不足・手袋が発覚する。軍手でもあったらずいぶん違っただろうに。途中、2、3回休憩を入れ、やっと小川が流れる平らな部分に出る。まだ1時間も経っていないのに、すでに汗だくで息が上がっている。そして二つ目の装備不足・タオルが発覚。正確には車に置き忘れて来たのである。基本中の基本なのに。これはこの後も本当に困った。Tシャツで汗を拭いながら再び急になった登山道を進むと、先行するキャプテン「何かある!」とのこと。木々の切れ間に巨大な白っぽい幹が見える。中間地点の万代杉である。
茂みの向こうに万代杉が!

万代杉

万代杉では、先行していた先輩女子隊+地元ガイドさんが休憩中であった。挨拶をして我々もしばらく休憩。彼女達は経験者らしく、服装も装備もしっかりしている。もちろん手袋もタオルも忘れていない。「頂上で」と声をかけて先に出発。
この先はずんずん登ってちょっと下り、またずんずん登ってちょっと下り、という繰り返しになる。問題は登りも下りも角度が半端でないことである。補助のためのロープも至る所に設置されている。
ロープを使って急斜面を登るキャプテン

誇張ではなく、本当にこれくらいの角度である

水場で一休みしてさらに進むと、次のポイント、モッチョム太郎に到着。太郎では休憩することなく、さらに先を目指す。
水場で休憩するキャプテン

モッチョム太郎

相変わらずの急勾配を進むと、次第に頭上の木々の間から空が見え始め、やっと神山展望台に到着。しかし再び出て来た雲に覆われ、何も見えない。

尾根伝いにモッチョム岳山頂を目指す。山頂手前でまた大きく下り、山頂へ続く一枚岩にしがみつくようにして再びよじ登る。最後は岸壁に垂れ下がったロープをつかみ、ロッククライミング!これは本当に初心者でも登れる山なのだろうか?8畳ほどの広さの山頂からは海岸線と海が一望できる・・はずだったのだが、雲に包まれて何も見えない。おまけになぜか大量の昆虫が飛び回っている。
虫にたかられるキャプテン

しばらく待つと次第に雲が薄くなって来た。近くの山の稜線が見え始める。途端に僕は自分が高所恐怖症であったことを思い出す。こうなると背中からお尻にかけてぞわぞわした感覚に教われ、まっすぐ立つことも困難である。キャプテン「何しに来たん!」とのこと。岩にもたれかかったまま三脚をセットし、しばらく撮影してみるものの、やはり何というか腰砕けな写真になってしまう。
モッチョム岳山頂より 何となく腰が引けた写真だ

頂上での滞在時間は15分くらいだったであろうか。カメラ機材を再びバッグにしまい、下山。しかし頂上からの脱出がかなり困難である。初めにキャプテンがチャレンジしたが、なかなかうまくいかずに一旦頂上に引き返す。
頂上からの脱出を試みるキャプテン 歩いて来た尾根が遥か下に見える
「これはパタゴニアのカタログみたいだ!」と思いながら写真を撮ってたら、命の危険を感じていたキャプテンから「あんた、何写真撮りよん!」と怒られた。

交代して、今度は僕が挑戦。しかしやはりうまくいかず、まごまごしていたところ、万代杉で会った女子隊+ガイドさんがロープ下に到着。ガイドさんから「岸壁に出て!足を広げて胸を張って!」と指示を頂く。それに従って何とか下まで降りることに成功。次はキャプテン。同じように岸壁に出てレスキュー隊がビルを降りてくる要領で下る。と、ふらふらっと横にひっくり返りそうになり、下から見ている一同冷や汗をかく。ここで落ちたらゴロゴロと数百メートル転がっていくであろう。何とか体勢を立て直し、無事頂上から脱出。いやー、危なかった。下りも勾配があまりに急なので、慎重に降りて行かねばならず、全然スピードは上がらない。たまに後ろからキャプテンの「おっ!」とか「わっ!」とか言う声とずるずると滑る音が聞こえてくる。キャプテン曰く「足を2回ひねり、5、6回滑り、最後はお尻で降りた」とのこと。結局、登りと同じくらいの時間をかけてようやく千尋の滝駐車場に戻る。往復7時間。生きて帰れて良かった。

死の山から無事生還した我々は、息つく暇もなく樹の実をめざす。ここのランチは14時まで。何としてもおいしいランチを食べたい。車をぶんぶん飛ばして何とか14時前に到着、いざお昼!と思ってカバンを見ると財布がない。2人で愕然としつつ、パンだけでもキープしておこうと店内へ。数個のパンを予約した後、キャプテン「ちょっとお財布忘れちゃって。でも、ランチは14時まで・・ですよねー?」と暗に時間外対応を要求する。お店の人は親切で、「良いですよー、大丈夫ですよー」とのこと。
すぐにホテルへ取って返し、財布を探索。結局、持っていたカバンの別のポケットに入っていることを発見して再び愕然としつつ、また樹の実に戻って念願のランチにありつく。ピザセット2種類。どちらも生地がサクサクで非常においしかった。「またいつか」とお別れを述べて再びホテルへ。温泉に入って深いダメージを受けた体を休める。